2016年06月14日

平易か難解か

子を殴(う)ちし長き一瞬天の蝉  秋元不死男

悪さをした子を叩いた後味の悪さが
「胸に刺さってとれない」ことを不死男は詠んだのだという。
後悔の気持ちや寂しさ哀しさが入り交じった気持ちであるという。

しかし寂しい哀しいの生の表現は一切無く、
その思いを中七から下五にかけての言葉に賭けた。
読者に対してお願いだから
「長き一瞬」と「天の蝉」で
思いを感じ取って欲しいというのであろう。

俳句を詠む読者はまずその詩情よりも、
言葉を意味でとらえようとする。
従って、最初はこの俳句を理解できない。
しかし繰り返し読み、
理解しようと努力するうちに、
作者の思いがじんと伝わってくるのだ。
俳句の表現とはそういうものだ。
作者の思いが言葉を介して一呼吸置いて伝達されるのだ。

逆に説明なしで理解出来る句がある。

擦り傷に唾つけてやる夏野かな   杉の子

どこの句会でも万点近い点を取った。
子どものころへのノスタルジアを描き出していて、
分かりやすい。
一般の作句で真似すべきは後者である。

不死男の句は素晴らしい余韻をもたらしているが、
初心者は難解な句、
読者が努力しなければ分からない句は作るべきではない。
作るべき句は、
誰もがすぐ分かる句であり、
判じ物のような句はやめた方がいい。
難しい言葉を使い、
読者に判断を委ねるような上っ面だけの句を独善句と称する。 
posted by 蕪村顕彰俳句大学事務局 at 00:00| 俳壇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする